記者ハンドブックは、文章を書く人必携の本

記者ハンドブックとは

『記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集』(以下、記者ハンドブック)は、一言でいうと、分かりやすい文章を書くためのツールの一つだといえるでしょう。特に、言葉を「漢字で書くかどうか」を判断するために使われることが多いです。
1956年に初版。12版目。11版は2008年。12版は2010年。記事記述時点では、12版が最新です。

新聞記事を書く記者用のためのものですが、ウェブライティングなど幅広く使えます。また、2者以上の間で文章のチェックなどをやりとりする場合、「なにかしらのルール」が必要になってきます。「この漢字はひらがなのほうがいい」「ここはこの表記を使うべきだ」と口論になることもあります。そんなとき、「記者ハンドブックに従う」と決め事をしておけば、無用なトラブルを減らすこともできるでしょう。
実際に会社の編集の人たちも使っていましたが、下手にネットで調べるよりも、この本を1冊携帯しておくと便利です。

あくまで「分かりやすい文章」を書くためのルールであって、子どもを対象とした文章、公的文書、人を引きつけなければいけないキャッチコピー、小説を書くための文章などのために参考にできるものではありません。意味を調べるためのものでもありません。

記者ハンドブックのメインの使い方 漢字で書くかひらがなで書くか迷ったときに引く

全ページの約半分は「用字用語集」で、漢字で書くかひらがなで書くか迷ったときに引きます。

例:「見にいく」の「いく」

「いく」を調べると、以下が見つかります。

いく 行く 行く先、学校へ行く

しかし、次の行には別の見出しとしてこう書かれています。

・・いく うまくいく、合点がいく、実施していく、減っていく、満足がいく
〔注〕補助動詞、主に「て」が加わったときや、「行く」の意味が薄れた場合。

この場合の「みにいく」の「いく」は、本来の意味が薄れた補助動詞としての使われ方をしており、「見にいく」とします。

例:「ひきつける」

「ひきつける」では載っていないため、「ひく」で調べると、以下が見つかります。

ひく (く、く、く、退く、く)→引く
引く〔一般用語〕網を引く、くじを引く、車を引く、辞書を引く、線を引く、注意を引く、綱を引く、手ぐすね引く、同情を引く、引く手あまた、引け目、人目を引く、身を引く、例を引く
〔注〕「風邪をひく」は平仮名書き。
弾く〔弾奏〕爪弾く、ピアノを弾く、弾き語り

「→(矢印記号)」は書き換える記号です。つまり、「惹く」ではなく「引く」とします。

次に「つける」では載っていないため、「つく」で調べると、漢字で書くことがわかりました。

「ひきつける」は、「引き付ける」だとわかります。

※ただし、この場合の「付ける」は、前述の「補助動詞」としてみることができるため、ひらがなであるべきだと思うのですが、「きづく」で調べると「気付く」と表記されているので、『記者ハンドブック』的にはこちらを採用しているようです。『NHK漢字表記辞典』を見ると、「ひきつける」は「引き付ける」、「きづく」は「気付く」で載っていました。

記者ハンドブックのその他の使い方

「誤りやすい用字用語・慣用句」では“嫌気がする→嫌気が差す、嫌気を起こす”などの、よくある言葉の間違いを記載しています。

「差別語・不快用語」では言い換える言葉を明示してます。ただし、“単純に言葉を言い換えればいいということではない。原則は「使われた側の立場になって考える」ことが肝要である。”

その他にも、肩書や敬称の書き方、数字の書き方、登録商標の言い換え、外国の人名・地名の表記例など。文章を書く上で知っておきたいことが多数掲載されています。

文章を書く人は携帯必須

『記者ハンドブック』は、ルールのうちの一つです。なにかの記事を書くような人は、持っておくべき本だと思います。