名刺をデザインする際に意識したい目的や項目

名刺作りは、考慮しなければいけない事柄が意外と多いものです。
そのため、「デザイナーになるためになにをすればいいですか?」と聞かれたときは「仮想ではない実際の案件の名刺作りでもしてみたらいい」と言っているくらいです。

今回は、名刺制作の際の、目的と項目を考えます。

名刺をデザインするために知らなければいけないこと

誰が使うか
大企業など複数人が同じデザインを使用する場合、長い名前や肩書きなども考慮しなければいけません。

誰に渡すか
決裁権を持つ人に渡すのか、エンドクライアントに渡すのか、同業者に渡すのか。それによってもデザインは変わってきます。

どのくらいの期間使うか
長く使うのであれば、運用面なども考慮したデザインにしなければいけません。印刷会社の対応も把握しておく必要があるでしょう。

いつ・どこで渡すか
営業先で渡すのか、セミナーで渡すのか、渉外対応のときに渡すだけなのか。使う頻度が高ければ、名刺の費用にも影響が出てきますし、暗いところで渡すことが多ければ、視認性の高いデザインにしなければいけないかもしれません。相手に直接渡すのか、ばらまくように渡すのかによっても、デザインは変わってきます。

なんのために渡すか
名刺で達成させたい、名刺の目的です。次で詳しく説明します。

名刺の目的

名刺をなんのために渡すか、つまり目的がなにかをはっきりさせましょう。
どういう項目を入れるか、どういったことが必要事項かは、目的が決まらないと決められないはずです。「女の子らしいデザイン」「黒を使ったデザイン」なんかは、もっともっと後で決めれば大丈夫です(もちろん、ボトムアップの考え方で作るやり方もありますが)。

企業の場合、名刺の目的は「利益を上げる」ことを達成させるための手段であることが多いでしょう。
その手段(つまり、名刺の目的)と、受け取った側のシナリオは、次のようなものが挙げられます。

例1

目的
連絡手段
シナリオ
名刺をもらう

なにか連絡を取りたいと思う

名刺フォルダーから名前や会社を頼りに探す

連絡先を見つける

この場合、なにかを依頼したいなどという行為の離脱を防ぐ役割しか担っていません。名刺を使うことで「連絡を取りたい」と思わせているわけではないのです。

次の例はきちんとした目的があります。

例2

目的
仕事ができそうだと思わせる
シナリオ
名刺をもらったときにすごくセンスのいい名刺だと感じる

日が経ち、パンフレットを作らなくてはいけなくなる

以前にもらった名刺のデザインを思い出す

名刺フォルダーからそのデザインを頼りに探す

会社のURLを見つける

会社のサイトを見る

自分のイメージにぴったりのパンフレットを作ってくれそう

名刺の連絡先に連絡する

ひとつめの場合と違い、名刺が「広告的な役割」を担っていることがわかりますでしょうか。また、サイトURLを記載し、サイトには仕事例などを載せて確信度合いを高めるようにしています。

例3

目的
その場での話題作り
シナリオ
名刺をもらう

デザインされているイラストや肩書きがつっこまずにはいられない

その話題をする

その人の考え方を知ったり趣味の話をしたりする

その人に興味をもつ

日が経ち、パンフレットを作らなくてはいけなくなる

いろいろデザイン関係の人と会ったが、一番印象に残っている人に連絡を取る

この、話題作りが目的の名刺もたまにお見かけします。

ここに挙げたのはほんの一例です。
名刺を「ただの連絡先を書いたもの」程度でデザインすると、とてももったいないことがわかるかと思います。
必ず受け取ってもらえる広告だと思えば、どのくらいの予算をかけられて、どういう目的をもたせて……、と考えをめぐらせることができます。目的を達成するためであれば、二つ折りの名刺を作ったっていいし、なにも書いていない名刺を作ったっていいし、食べられる名刺を作ったっていいわけです。「頭のいい人には見えない名刺です」といって名刺を渡すフリをしてトークで名前などを覚えてもらっても面白いかもしれませんし、名刺は渡さずSNSでつながるようにするという選択肢もあるかと思います。

AIDMAの法則(人が商品を購入するまでの段階を表しているもの)がありますが、上記をこれに当てはめると、「連絡手段」が目的の場合、最後のA、つまりAction(行動)しか担っていません。Attention(注意)からMemory(記憶)までの部分は、トークなどで担わなくてはいけいないということです。
「仕事ができそうだと思わせる」が目的の場合は、うまくいけばAttention(注意)からMemory(記憶)まで担っている場合もあるでしょう。

1種類の名刺で目的を達成できなさそうであれば、目的別に名刺を複数持つのも手です。

名刺制作で決めなければいけないこと

  • デザイン
  • 制作ソフト
  • 運用ルール
  • 印刷会社
  • 紙質
  • 費用
  • 大きさ
  • 加工

などでしょうか、名刺制作で決めなければいけないことは。

ちなみに、名刺制作にどのくらいの費用をかけますか?
必ずもらってもらえる広告だとすると、1枚にいくらまでかけられるでしょうか。高ければ1枚100円くらいしますし、安ければ1枚1円程度から作れます。100倍の費用を払ってでも、それ以上の期待値が返ってくる見込みがあれば、そういったデザインにするべきでしょう。

デザインの中でも、特に情報設計は、次のようなものがあります。

名刺に入れる項目(情報設計)

名刺に入れる項目は以下が考えられます。

  • 名前
  • 読み方
  • 役職
  • 肩書き
  • 会社名
  • 所在地(本社や支店など)
  • 住所
  • 連絡先(電話番号、内線、ケータイ電話番号、FAX、メール)
  • ロゴ
  • コーポレートサイトURL(検索キーワード)
  • 印象・イメージ
  • 事業内容(できること・やっていること)
  • 顔写真・似顔絵
  • 店・オフィスの写真
  • 会社について(経営理念など)
  • 部署名
  • リリースしているアプリやサービス
  • 本人について(生年月日・座右の銘・趣味など)
  • 本人のスキル
  • 本人の資格
  • SNSアカウント
  • プライバシーマーク
  • 取得ISO
  • 地図
  • QRコード
  • キャッチコピー
  • 認定のロゴやマーク
  • 所属団体のロゴやマーク
  • ポートフォリオなどのURL
  • 関連会社情報
  • なにかを書き込めるスペース

あとは、これの全体的な英語表記だと思います。

限られた小さなスペースですので、目的や渡す人や費用など考慮して、本当に必要な項目か判断しましょう。

名刺のレイアウト(UI設計)

UI設計(デザイン)は、情報設計で取捨選択した項目をどのようにレイアウトしていくかを決めます。
今まで決めてきたことから、おのずと答えはしぼられてくるのではないでしょうか。

たとえば、

  • 名刺フォルダーに入れる人が多そうだから、必要な情報は片面にすべて載せる
  • 名刺を渡すときは必ず「裏面を見てください」と必ず言うようにして、裏面に自分の趣味などを記載する
  • 自分用の名刺で、名前も漢字のままでだいたいの人が読めるのでふりがなは書かない
  • 住所は移転してしまうかもしれないので名刺に記述せずサイトURLを書いてサイト内で確認してもらう
  • サービスの認知が主な目的なので、表面の1/3を使ってサービスのロゴを載せる
  • 個人事業主で、主に渡すのがエンドクライアントではなく、元請けが多いため、自分のスキルを載せる
  • 渡したときに、名前と肩書きに注目してほしいため、連絡先などの項目は裏面に載せて表面をシンプルにする

などなど、型にしばられすぎず、目的に合わせてデザインすることが大事です。

名刺のビジュアルデザイン

ここまで来たら、あとは思い思いに、目的を達成できるビジュアルデザインをするだけです。
Webデザイン畑で育った人は、RGBとCMYKの違いや、dpi、データ入稿の仕方などに注意しながらデザインしていきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。意外と考慮することが多いものです。
名刺を作る際や入れる項目に迷ったときに参考にしていただければ幸いです。